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1. 生命の情報とコンピュータ

1-2.バイオインフォマティクスの実例

まず、バイオインフォマティクスが始まったごく初期の例を2つ、参考書から抜粋しました。

■ 発がん遺伝子 v-sjs のデータベース検索

v-sis は,サル肉腫ウイルス(simian sarcom virus)とよばれるレトロウイルスの ゲノムに組み込まれた発がん遺伝子である。1983年にはその塩基配列は決定されていたが, v-sis による肉腫形成の分子レベルでの作用機序は不明であった。その年, 血小板由来成長因子(platelet derived growth factor)の塩基配列が決定され、 その配列データを問い合わせとしたデータベース検索が行われた。すると、v-sis が血小板由来成長因子に有意な配列類似性を示すことが判明した。 この発見により,v-sis の発がん機構の研究は大きく進展した。また、 この発見はデータベース検索の有効性を強く実験研究者に印象づけ,情報科学的アプローチが 分子生物学に広まるきっかけとなった。

[講談社 タンパク質機能解析のためのバイオインフォマティクス 藤 博幸 著]

■ BLAST検索の自動化

あなたがマウスDNAの非常におもしろい領域を発見したとしましょう。 そして、それがヒトにおける致命的な脳腫瘍の進展に何らかの役割を侍つかもしれないと考えたとします。 DNAシークエンスを解析した後で、BLASTのようなウェブベースのシークエンスアラインメントツールを 使用してGenBankや他のデータベースで検索を行ったとします。関連するシークエンスが見つかりますが、 期待していた脳腫瘍への関与を示す情報も、関連した情報も得られません。

公的な遺伝子データベースが毎日急速に拡大していることは知っているので、 何か新しい情報がデータベースに現れないかを確かめるために、前の検索結果との比較を毎日実行したいと思うでしょう。 しかし、それには毎日1時間あるいは2時間かかるかもしれません! 

幸いなことにあなたはPerlを知っています。 おかげで(Bioperlモジュールを使用して)手元のDNAシークエンスのGenBankに対するBLAST検索を毎日自動的に行い、 前日の結果と比較して変更があった場合にだけあなたに電子メールを送るプログラムを一日仕事で書くことができました。 このプログラムは非常に便利なので、他のシークエンスのためにもそれを実行するようになります。 また、あなたの同僚もそれを使い始めます。数カ月のうちに、あなたの一日仕事が、 あなたのコミュニティーの何週間分もの仕事をこなすようになりました。

この例は実際にあった話です。 今では、こうした目的のために使用できる既存のプログラムがありますし、 DNAシークエンスと電子メールアドレスを登録するだけですべてを行ってくれるウェブサイトすらあります。 これは生物学にコンピュータの計算力を応用することで得られたもののほんの一例です。 これがバイオインフォマティクスです。

[オライリー・ジャパン バイオインフォマティクスのための Perl 入門 James Tisdall 著 水島 洋 監修・訳]



近頃の例も一つ。

■ RINGS : Resource for INformatics of Glycomes at Soka (http://rings.t.soka.ac.jp)

糖鎖情報解析のためのサイト。

既存の複数の糖鎖データベースから糖鎖情報を集めて整理し、関連付けて、 糖鎖の統合データベースを構築しました。また、今までにない便利な糖鎖の描画ツールを開発し、 糖鎖統合データベースに対して描画した糖鎖を検索にかけることも可能となっています。

基本的には Perl 言語でプログラムを組み、MySQLによりデータベースを管理しています。

[ 創価大学 木下 研究室 ]



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