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3.タンパク質の立体構造と機能

■ タンパク質とアミノ酸

タンパク質におけるアミノ酸の組成


Coiled-coilの概略図(1d7m)



Coiled-coilにおける位置とアミノ酸組成



■ タンパク質の機能と立体構造の関係性

  • 触媒作用 
  • シグナル伝達 インシュリン、
  • 物質輸送 ヘモグロビン、フェリチン
  • チャネル
タンパク質の機能には、様々なものがありますが、 それらすべては他の分子への結合(特異的分子認識)に伴って生じます。 この特異性は、基本的にはお互いの形状電荷分布の相補性、および水素結合の供与体と受容体の分布から生じます。 よく知られた例えとして、鍵と鍵穴の関係が挙げられますが、これは形状に関しての例えであると言えます。

ただし、同一のフォールド形式でも機能が異なることはしばしば確認されている。
[ 演習 1 ]
次に挙げたタンパク質の名前(日本語)を調べてみよう。
今日の演習で調べた内容はワードファイルにまとめ演習時間内に提出してもらいます。

PDB ID : 1aj0
PDB ID : 2cwn
PDB ID : 1spq


■ タンパク質の柔軟性と機能

また、特定の鍵穴には特定の鍵のみが使用できますが、ときには特定の鍵穴に複数の鍵がマッチすることや、 マスターキーと呼ばれるような複数の鍵穴に使用できる鍵も存在します。 このような現象はそのままタンパク質の世界でも起こっています。
  • 複数の鍵を使用可能な鍵穴の例: ヘモグロビンへの一酸化炭素やシアン化水素の結合
  • マスターキーの例: ATP、cAMP


さらに、タンパク質および結合対象は、その形状を変化させることで結合できるようになったり(induced fit)、 逆に結合できなくなったりすることも明らかにされています。これらの形状の変化は、 タンパク質の構造安定性に関するエネルギーと結合により得られるエネルギーとのバランスにより起こります。
  • 基質の存在により大きく構造が変化する例
    アデニル酸キナーゼは、補基質であるATPが結合すると開放型(2ak3)から閉鎖型(1ank)へと変化する。(55p)
    PDB ID : 2ak3
    PDB ID : 1ank

  • タンパク質が結合対象に合わせて構造を変化させる例
    ヒト成長ホルモンとその受容体2分子との複合体。ヒト成長ホルモンの異なるサイトに受容体の同じ部分が結合している。(56p)
    PDB ID : 1kf9

    [ 演習 2 ]
    成長ホルモンに結合してる2つの受容体の違いについてまとめよう。

  • 基質の結合によって構造が変化し、機能を調整する例(アロステリック効果)
    アスパラギン酸カルバモイルトランスフェラーゼは、 6つの触媒サブユニットと6つの調節サブユニットからなる複合体を形成しており、 調節サブユニットにCTPが結合することによって構造が変化し、活性が阻害されることが知られている (低活性型:1raa、高活性型:1at1)。
    カルバモイルリン酸とL-アスパラギン酸からピリミジン合成に必要なN-カルバモイルアスパラギン酸を 形成する反応を触媒する酵素である。ピリミジンヌクレオチド合成の最終産物であるCTPが増えると CTPが結合することによってアロステリックな阻害を受ける。

    [ワトソン 遺伝子の分子生物学(上)第4版 157p]

  • [ 演習 3 ]
    上述のPDB IDの立体構造を確認し、上の模式図と同じ角度でのスクリーンショットを撮ろう。

  • リン酸化されることにより構造変化し、機能調整を行う例
    グリコーゲンホスホリラーゼ(GP)は、14番目のセリン残基の側鎖がリン酸化されることにより構造が変化し、 活性型となる。セリンがリン酸化されると不活性構造において基質が活性部位に入ることを妨げているループ(緑)が 移動し、活性部位に入り易くなる。その他に赤で示したサブユニット間接触面においても構造変化が起こる。 (低活性型:1gpa、高活性型:1gpb)

    [タンパク質の構造と機能 Gregory A. Petsko 111p]

  • そもそも構造の無いタンパク質が結合することにより構造を獲得する例
    pCREBは、単独では立体構造を形成することができないが、CBPと結合することにより立体構造を獲得することが知られている。 シグナル伝達を担うタンパク質や多くのタンパク質と結合するタンパク質などに見られる。
    [THE CELL 細胞の分子生物学 第4版 858p]


    pCREBのpKIDドメイン(116〜147残基)+ CBPのKIXドメイン(586〜672残基)
    pKIDドメインの構造はいつできるのか?

    PDB ID: 1kdx

    [Mechanism of coupled folding and binding of an intrinsically disordered protein. Nature. 2007 Jun 21;447(7147):1021-5.]


    ※構造の無いタンパク質のデータベース: Disprot - Database of Protein Disorder



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©kazuo